県産木材の家を建設して
県産木材の家を建設して

鞄。川建設 藤川 隆

はじめに

 3年前の2000年7月に、地球環境講演会に出席しました。全てのきっかけはこのときです。
 講演会の内容は、現在の経済活動、環境破壊が続けば、温暖化、オゾン層破壊、森林破壊、食料不足、 水不足により、人類の将来は危ういというものでした。  その講演会の終了後、この上ない絶望感を味わい、家路の足取りは重かったのを覚えています。

このままではいけない。なんとかならないか?

           ・・と思い立ち、県内の環境改善活動グループや山林ボランティア活動めぐりがはじまりました。
 長岡市の「地球村」「地域循環ネットワーク」や「みずばしょう」、「グリニッシュ」「山野草をたずねる会」、 十日町の「みずすまし」や三条の「NPO法人良環」などなど・・  各団体でいろいろな人と出会い、いろいろな話をしてきました。
 そんななか、新潟市で水源としての山林を守ろうという「山林ボラン広場」にめぐり合い、

海外の木材に圧され、地元の林業が衰退し、山林が荒れている。

という地元山林のおかれている現実を目の当たりにしました。
 実際、我々建築の現場ではコストダウンのために安い輸入品を使い、早く造ることが主流となっていました。(現在もそうですが)
 地元の木材は殆ど使われなくなり、流通にのらなくなってしまっている。

 ちょうどその頃、新潟大学で木材の講座が開かれていて、

地元の山林を利用すれば、一定の二酸化炭素を固定し、半永久的に資源を得られる。

という理論を学びました。

 木は成長とともに炭素を蓄積し、計画的に伐採、植林していけば大気中の二酸化炭素を吸収でき、資源になります。
 その材料を木材や建材にして耐久年数を上げて長く使ってやれば、炭素を固定できます。
 使い終わったら、エネルギー(燃やす)として利用できます。


地元の山林の資源を利用すれば、温暖化防止に協力でき、地域の循環社会、循環経済に貢献できる。

木を扱う自分の仕事で対応できる。

  と確信し、自分の仕事でどのようなことができるか模索しました。

2001年夏に自社の敷地にドラム缶で炭焼き窯を作り、 木材の廃材で炭を焼き始めたことをかわきりに、 荒れた竹林を伐採のボランティアをして、その竹を竹炭にしたりしました。
長岡市の公共建築物を木造で・・という話がもちあがり 「長岡木造振興研究会」が立ち上がり積極的に参加しました。

会社でも、県森連から地元木材を使った家づくりをするネットワークを つくろうということで「越後に生きる家をつくる会」に入会し、山に近づいた家作りの試みもはじまりました。

地元産材を使った家づくり

 2002年度から、地元産材を使った家作りが本格的にはじまりました。
 受注した家も、殆どが外材から国産材、地元産材を使うように心がけ、その材料を使う技術を学ぶことになります。
 「木造振興研究会」の研究会と平行して、地元の伝統技術を見学し、実際の建物に応用しました。
 大工も電動のこぎりや釘打ち機を使うよりも、のみやかなづちを使ったほうが活き活きしています。
 それまでいかに早く作るかを競ってきましたが、自然のサイクルに沿った家づくりは、如何に木を組み合わせ、 長持ちする家をつくるかという考え方に変わります。

伝統木造建築は雪国で培われてきた技術の集大盛で、学ぶことが多い。

2002年度 吉田町T邸

◎木材
2002年春に主要な構造材は市場より地元杉丸太を購入し、大割にして、夏まで乾燥し、 残りの構造材は材木店より購入しました。

◎加工
建物の形状が丸太と丸太が組み合わさり、丸太を中心とした16角形の屋根なので、 プレカットは不可能で、全て手加工となりました。
金物の接合の替わりに、栓やくさびを使って固定する仕口にして耐久性を高めています。
 墨付けや手加工といった伝統工法の基礎とも言うべき技術は、 最近の短期間に組み上げる建築方法には手間がかかりすぎて、嫌遠されがちですが、

「木をいじりたくて大工になったのに、なかなかいじらせてもらえない」

「墨付けや、ノミ、カンナを使ったことが無い」

と、なげいている若い職人が増えているのも事実です。 次の世代へ受け継ぐためにも、場を与えていく必要もあります。(山林の場もそうですが・・)

工場にて、仮に組み立てています。

◎上棟
丸梁と柱にクサビを打って固定

大黒柱の脇から土台を差込み、栓を打って固定させる。
下に角を敷いて浮かせておき、上の屋根部分が組み終わってから柱を下げ、土台を基礎に固定させます。

大黒柱をロープで固定しながら、四方から梁を差し込んでいき、クサビを打って固定します。

16角形の屋根の母屋は梁に差込み、栓で固定します。

明り取りの屋根も、大黒柱を中心につくられます。

タルキを並べると屋根の形がわかり、全体の形がみえてきます。

建て方終了

 建物の中からみたところ。大黒柱を中心に放射状に伸びた梁と屋根が印象的です。
 柱に差した丸梁をクサビを打って固定している様子がわかります。

◎乾燥期間

 上棟終了後、2~3ヶ月建てたまま放って置いて乾燥させ、11月頃に造作。年末に引き渡しをしました。
 お客さんの理解があり、乾燥期間を設けることができたので、狂いが少ないが、丸太の部分は、 十分な乾燥ができなかったので、ところどころにひび割れが入っていますが、構造的には支障がありません。
 昔は、2~3年くらいの長い期間をかけていたそうです。

◎完成

 全体に真壁で統一し、柱や梁、腰板はベンガラや墨汁、カキシブ等の天然素材で着色し、古民家風に仕上げました。
 吹き抜けに明り取りの窓を設けて、明るく、暖かい建物となっています。(これはお客さんのかねてからの注文で、 それに応えた形となっています)
 大黒柱とそこから四方に伸びる梁がダイナミックに組み合わさっている様は、昔ながらの建物が想い出されるようで、 訪れた人の癒しの空間となっています。
 町のシンボル的な建物となり、地元の幼稚園の展覧会では、この家を題材にした絵が多く見られたそうです。

 大黒柱や梁は、そのまま仕上げ材となっています。
 腰板には加茂ウッドシステムの杉羽目板を使用し、全体に古民家風に仕上げました。

 杉の端材でカウンターを集成して作成し、大黒柱(丸い)の形状に合わせた形の机をつくってみました。
 杉はおとなしく、木肌もきれいなので、集成材にすれば端材も最後まで使い切れます。
 焼却処分をなるべく避ければ、二酸化炭素の削減にもつながります。

 

 

2003年度 長岡K邸

 2002年春に市場より地元杉丸太購入し、大割にして秋まで半年間乾燥し、冬に製材、加工して2003年春に上棟。
 製材までの乾燥期間が長かったので、適度に乾燥していました。

 天然乾燥は人口乾燥に比べてひび割れが少なく、雨にさらすと黒いシブが抜け、赤味の美しい材料になります。

 小屋組みは雪国ならではの丸梁と丸太(中引)を組み合わせた構造としています。

丸太と丸太を組み合わせ(台持ち継ぎ)大栓を打ち込んで固定します。

 栓やクサビにより、金物をなるべく使わない方法を採用しています。
木と木はよくなじむので、耐久性があります。

 

 

にいがたスギブランド材を使った家づくり

2003年度 長岡A邸

 長岡市内の1階RC造の木造3階建て住宅で、間口が狭く、奥行きの長いいわゆる「うなぎの寝床」状の建物です。
 契約から着工まで、時期がなかったために、既製品に頼る方法を採用。
 横架材は米松。柱、下地材をスギブランド材で対応しました。野地材や間柱、 壁下地などを合わせて1uあたり0.09m3を使用。(県の持家住宅融資制度の基準を満たすことが出来ます)
 県のスギブランドPR事業として参加しました。
 下地材を地元産材に切り替えるだけでも、ボリュームが出ることがわかります。

建て方の模様

 構造は時間の問題もあって、プレカットを採用しましたが、なるべく金物を使わない方法をとりました。
 柱と横架材の接合には込み栓(今回は丸栓)を使用しました。

横架材では唯一のスギブランド材の登り梁(台所の化粧梁となります)

伝統雪国住宅ならではの丸梁と中引き(大栓を打って固定)

 小屋組み:梁と中引きが直交しています。

 野地板もスギブランド材となります。

 屋根を貼った後の小屋裏の様子

 パネル(間柱に構造用合板を貼り付けたもの)は筋違いの替わりになります。間柱もスギブランド材を使用しています。

構造見学会の様子

にいがたスギブランド材を使って

 今回、初めてスギブランド材を使ったわけですが、下地材に使えば含水率18%だけクリアできればいいので、 (構造材に比べて)導入が容易になります。
 柱や間柱、野縁や胴縁は入手が容易で、スギブランド材にすれば 1uあたり0.07m3以上は確保できるので、県の持家住宅の基準もクリアできます。
 値段も(輸入材に比べて)さして上がらないようです。

 ただし、下地材は含水率の管理が必要となります。
 スギブランド材と銘が打ってあっても、野地板や胴縁などの下地材は工場出荷で 含水率18%以上の場合もあるので、(重ねて束になっているため中が乾燥しない。 加茂ウッドシステムでは可能か?)現場で打ち付けた状態で乾燥期間を設ける必要もでてきます。
 全て工場に負担させるのではなく、使い手が工夫をするのもひとつの方法です。
 スギブランドの性能を損なわないブランド志向が必要です。

 構造材に関しては、強度測定と含水率20%をクリアしなければならないので、 自社で大割りして乾燥した場合、認定工場で製材するか、認定員に確認してもらうかしなければなりません。
 製材所や材木店に頼む場合も、乾燥が問題になります。自然乾燥をするには土場と十分な乾燥期間が必要となり、 強制乾燥する場合も、丸太の含水率と窯に入れるタイミングの問題があります。

 乾燥の仕方によっては山から切出す時期の問題も出てくるので、発注するときは、 余裕をもって注文する必要があります。
 急に必要になっても、材料が揃わなければ意味がありません。 その都度山へ行って切って来るわけにもいきません。
 絶えず製品をストックできる体制がとれればよいのですが、材木店が在庫をかかえるにはリスクが大きすぎます。 地域の山林、製材工場、建築現場が連携していかなければならないようです。

 

 

古民家+地元材+伝統技術+新しい工法

古民家の材料と地元間伐材を組み合わせた、金物を使わない伝統工法の家が進行中です。
越後に生きる家をつくる会で金物を使わない建物を確認申請で通す試みも、この建物で実施しようと思っています。 (おそらく、全国初です)

長岡市S邸

 大正5年から続いた古民家の材料です。
 古民家は大きな梁などに材料を使っていたので、これを利用します。

 森林組合の小径木を大割にし、井桁に組んで乾燥中です。
冬季はゆっくり乾燥するので、割れが入りにくく材料に負担無く乾燥させることができます。

下地材から見直す

 我々、工務店のよく使う下地材はロシア材ですが、シベリアの奥地から切出されているようです。(資料参照

 シベリアの奥地で融けた氷の中からマンモスが出てきて、ステーキになっているそうですが、 背景には大規模な森林伐採があります。永久凍土が融解し、その中にとじこめられていた 二酸化炭素やメタンガスが大気に放出され、さらに温暖化を進めています。
 伐採された木材は、日本に輸出され、紙の原料や下地材に使われています。 (又は、中国に輸出され、加工されて日本に入ってきます)
下地材を地元材に切り替えるだけでも、温暖化防止に役立ちます。

長岡市内の工務店が下地材を地元材に切り替えるシステムができないか、検討中です。

「のぶち100本基金」

    
おわりに
 今思えば、環境問題の講演会をきっかけに、あがいて、いろいろとめぐったことが良かったのだと思います。
 問題に向けて絶えず考え、行動を起こしていくことが道を開くことにつながります。
 色々な人と出会い、討論ができるのも楽しみのひとつです。

 自然のサイクルに沿った、伝統工法の家は、昔は当たり前のことで、環境に負荷を与えない永続可能な方法です。
 山林に活気が出て、水源としての山林を整備し、町や田んぼが潤えば、地域全体の活性化につながります。

 家づくりをとおして、循環社会づくりの一環としての役割が果たせれば幸いです。


お問い合わせはこちらまで